2007年9月3日月曜日

(墓5)外国人にも税の優遇措置の告知を

おもにブラジルとペルーの日系人やその配偶者などからなる中南米出身の日本への“デカセギ”は定住(停住)傾向が顕著で、家族の“移住”も少なくない。

法務省統計によれば平成一二年一二月末日でブラジル人は二五万四〇〇〇人、ペルー人は四万六〇〇〇人が居住している。ちなみに前者はポルトガル語、後者はスペイン語を話す。

彼らも所得税や住民税を支払う納税者。税制上の優遇措置も含めた、各種の社会福祉の恩恵に浴する権利は完全に持っているはずだ。ところが、現実は違う。

公的保険に関しては、地方自治体での対応がきめ細かく、外国人にも敷居は低くなってきている。

一方、税務署はどうか。確定申告の場合、「申告の手引き」に英語版があるだけ。「英語は世界の共通語」というのは、英米文化圏に漂う一種の幻想であって、日本人はこのことを痛感する必要がある。つまり、対応は不十分で「返すべき税に関しては告知不足」といえそうだ。その結果、確定申告を経て各種の控除を受けた人は、ごく少数だ。

乳児死亡率が、彼らの「社会的に弱い立場」を示す。厚生労働省の人口動態統計によると、平成一二年には七四四人のペルー国籍を持つ新生児が日本で生まれたが、同年の乳児死亡者は一〇人。出産一〇〇〇件に対して一三・四人の死亡率である。ブラジル人では出産三〇五一件のうち死亡は九人だった。出産一〇〇〇件での死亡率は二・九人で、同年の日本人の乳児死亡率(一〇〇〇件のうち三・二人)より低い計算になる。

ペルー保健省の統計によると、ペルー本国では出産一〇〇〇件に対して、五五・五人の死亡とと極めて高いが(九六年)、九四年の段階で、貧困や地域医療の偏重のために近代医療を受けられない人の割合が二五%という現状を勘案すべき数字である。

しかし、日本の医療制度は整備されている。ペルー人の高い乳児死亡率は何を意味するのか。在日のペルー人とブラジル人を分けるのは、言葉の壁であるようだ。

在日ブラジル人には日本語能力の高い人が多い。日本語が苦手な人は、彼らに頼ることができる。ところが在日ペルー人で、日本語にたんのうな人は、まれである。官公署から送られてくる文書による通知、書類記入をともなう各種の申請は、かなり不得手だ。笑い話ではなく、各種の手続きやヴィザの延長申請にあたっては、日本の学校に通う彼らの子どもたちに“通訳・翻訳”を頼む親も少なくない。それが、小学生という事例も実際にある。

国は、在日外国人(就労者)からも税金を徴収する以上は、税制上の優遇措置の告知等にも責任を持つ必要があるのではないだろうか。日本人が在日外国人の存在や生活に無関心であろうと、日本人コミュニティーへの受け入れに拒否反応を示そうと、またそうでなくても、彼ら“デカセギ”たちは、労働力として、また納税者として、この社会を支える一員に他ならない。 〆

『納税通信』2002年2月18日 「一筆啓上」欄

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